
普段バイクのカタログやスペック表などで出てくるバイクの減速比、実は乗っているバイクの性格を決める重要な数値でありながら意外と、なんとなーく意味はわかるけどそこまで意識してないという人、もしくは減速比なんてまったく興味のない人は結構多いんじゃないかと思い減速比についてまとめてみたい思いました。
今回はそんな減速比をわかりやすくまとめて解説していきたいと思います。
目次
減速比で速度重視かトルク重視か簡単に見分けるポイント
説明が殆どになってしまうので結論だけサクッと言います。
1次減速比✕2次減速比=〇〇重視結論で言えばこれだけです。
数値が大きければトルク重視小さければ最高速度重視と思ってくれてかまわないと思います。
下記で話しますがこの数値は排気量によりかなり異なります。あくまで同じ排気量と比べて数値の大小を見てください!
ギア比は走行中に自分でシフトチェンジが選択をできる分、状況にあった選択をするのが一番だと思っています。最高速度重視の2速!とか言われても意味不明ですしね。
ちなみにエンジン回転数÷1次減速比÷2次減速比÷ギア比=タイヤ回転数
タイヤ回転数✕タイヤ外径✕3.14(円周率)✕60(分)=時速がわかります
減速比とは
前提としてまずエンジンの回転数を軽く解説します。すべてのエンジンには回転数が存在しますがその回転数は一分間にどれだけエンジンが回転するかを表しています。例えばNinjaZX-25Rはレッドゾーン17000rpmとなっていますが一分間にタイヤが17000回転してるわけではありません、エンジンの中にあるクランクシャフトが17000回転していることを表しています。
減速比とはエンジンの回転数をギアやスプロケットなどを使い回転を減少させ、タイヤまで上手に力を伝えていくまでにどれだけ回転を減少させるかを表しています。
回転数の伝わり方 一次減速→ミッション(ギア)→二次減速
まずクランクシャフトの回転をミッション(ギア)に伝えるときに使われるのが一次減速です、クランクシャフトの端に付いているプライマリードライブギア(小さい歯車)とミッションに付いているプライマリードリブンギア(大きい歯車)によりエンジンの回転数を減少させることを表しています。そしてその比率が一次減速比となります。
ミッション(ギア)とは主にクランクシャフトから伝わった回転をギアにより適切なトルクと回転速度に変速してドライブスプロケットに伝えるための機構になっています。また1速が減速比が最も大きく6速で最も小さくなります。これを表している比率がギア比と呼ばれているものです。
ドライブスプロケットの回転数をチェーンを通しタイヤ側に付いているスプロケット伝えた時に使われるのが二次減速です。エンジン側に付いているスプロケットをドライブスプロケットと言いリアタイヤ側に付いているスプロケットをドリブンスプロケットと言います。そして前後スプロケットの丁数の比率より二次減速比が決まります。
そしてこのドライブスプロケットとドリブンスプロケットが減速比のカスタムをする場合一番手を出しやすい場所になります。 エンジン側の丁数を少なくするとその分タイヤを回す量が減るのでトルクが上がり最高速度が下がり、リアタイヤ側の丁数を減らすと逆に少ない丁数でタイヤを1回転させないといけないのでトルクが下がり最高速度は上がります。
一次減速比を数字で読み解く
まず一次減速比は排気量が低いバイク(トルクが不足)やトルク重視の場合は数値が高くなります。
おおよその目安として250ccクラスで一次減速比3.0以下でありZX-25Rが2.900 となっており排気量が1000ccクラスになるとトルク不足が解消される代わりに燃費や最高速度を稼ぐために数値が低くなります、
一次減速比 | |
ZX-25R | 2.900 |
Ninja400 | 2.218 |
ZX-6R | 1.900 |
ZX-10R | 1.681 |
ZX-14R | 1.556 |
このように排気量によって不足いているトルクを一次減速によって補っているのがわかります。
ギア比を数字で読み解く
次にギア比を見ていきます。ZX-25Rを例に出すと1速 2.927となっており、これはエンジン3000rpmの場合が3000回転÷一次減速比2.900÷1速2.927=ドライブスプロケットの回転が1分間あたり353.4回転を表しています。そして6速 1.036の場合同じ計算式でドライブスプロケットの1分間の回転数は998.5回転となります。そしてギア比はバイクの性格を知る上でかなり重要だったりします。
例を上げると同じ250ccであるZX-25RとGSX250Rとセローで見比べてみたいと思います。
ZX-25R | GSX250R | セロー | |
一次減速比 | 2.900 | 3.238 | 3.038 |
1速 | 2.927 | 2.415 | 2.845 |
2速 | 2.055 | 1.529 | 1.812 |
3速 | 1.618 | 1.180 | 1.317 |
4速 | 1.332 | 1.042 | 1.034 |
5速 | 1.152 | 0.908 | 0.820 |
6速 | 1.036 | 0.806 | 無し |
ローギア | ハイギア | 1〜3速ローギア4〜5速ハイギア |
250ccで一番馬力があり最高速も一番あるZX-25Rは一次減速比が3台の中で一番小さいですがギア比は3台の中で一番大きい値でローギアな設定(トルク重視)であり、3台の中ではギア比によってトルク(加速性能)を稼いでいるのがわかります。
そして逆に中低速トルクに優れていると評判のGSX250Rは一次減速比は一番大きいですがギア比に関しては一番ハイギアな設定(高速走行)であり、トルク(加速性能)は十分あるのでギア比によって燃費と最高速を稼ごうとしています。
そして低速トルクが一番重視されるオフロードバイクであるセロー250は一次減速比こそGSX250Rより低いですが、3速までのギア比はすべてGSX250Rよりもローギア設定(トルク重視)であり、オフロード向けの設定をしています。ですがすべてローギア設定だと乗りにくくなってしまうので、4速5速はオンロード向けに調整されており、他に比べハイギア(高速走行)な設定にしています。
このようにギア比とはエンジンの長所伸ばすよりも、自分で走行中にシフトチェンジできる分短所を補うイメージが近かったりします。
2次減速比を数字で読み解く
2次減速比は通称ファイナルギアとも呼ばれ最終的にどれだけタイヤを回すかを決める最後の減速となります。
上記の表でギア比はZX-25Rが他2台よりもローギア設定でトルク(加速性能)を稼いでいたのがわかりましたが、ZX-25Rは間違いなくGSX250Rやセロー250よりも最高速度はあります。
2次減速比 | ギア比 | 一次減速比 | |
ZX-25R | 2.857(ハイギア) | ローギア | 2.900(ハイギア) |
GS250R | 3.285(ローギア) | ハイギア | 3.238(ローギア) |
セロー250 | 3.200(ローギア) | ローギア | 3.083(ローギア) |
このように2次減速比ではZX-25Rが一番ハイギアであり最高速重視であることがわかります。そしてセローのようなオフロードは二次減速比もトルク重視(ローギア)設定であることが伺えます。
減速比で速度を計算する
例をとしてZX-25Rが3000回転を出している場合3000回転÷1次減速比2.900÷2次減速比2.857÷1速2.927=タイヤの回転が1分間あたり123.7回転となります。
一例として理論上、後輪タイヤ140/70-17の場合1周あたり179.5cm進むので4速の場合1分間タイヤが約271回転して487mの距離を進むことになります。時速にして29.2km出していることになります。
3000rpm時 | タイヤ回転数 | 進む距離(時速) |
1速 | 123.7 | 13.3km |
2速 | 176.1 | 18.9km |
3速 | 223.7 | 24.0km |
4速 | 271.8 | 29.2km |
5速 | 314.3 | 33.8km |
6速 | 349.5 | 37.6km |
セロー250の場合も同じような計算でリアタイヤが一周あたり193.8cm3速で一分間に230回転するので445m進みますのでおおよそ時速26.8kmと計算できます。
ギア比はどちらのバイクも1.3付近で時速も30キロ手前ですがタイヤ回転数がセローが約41回転少ないです。つまりエンジンは同じ仕事量でタイヤを少なく回し(1回転あたりの力が強い)速度も維持できるという結果になります。
そのためセローはトルク重視(少ないタイヤorエンジン回転数で同じ距離を進むため)のバイクと言えるわけです
3000rpm | ZX-25R | GSX250R |
1速 | 123.7回転 | 116.7回転 |
2速 | 176.1回転 | 184.4回転 |
3速 | 223.7回転 | 239.0回転 |
4速 | 271.8回転 | 270.6回転 |
5速 | 314.3回転 | 310.6回転 |
6速 | 349.5回転 | 349.9回転 |
しかしトルク重視のGSX250Rと速度重視のZX-25Rで計算するとタイヤの回転数はほぼ一緒という結果になり上記のセローのように少ないタイヤ回転数で同じ距離を進むという結果ではありません。
ではなぜGSX250Rはトルク重視なのかというと回転数÷1次減速比=クランクシャフトの回転がGSX250Rは926回転に対してZX−25Rは1034回転と108回転少なくその分力強くギアに力を伝えます。しかしそれでは加速性能は高いですが速度が出ないのでギア比はハイギアな設定にしておりトルクは相殺されてしまいます、しかし次の前後のスプロケットで表される2次減速比がGSX250Rが3.285とZX-25R が2.857となっておりドライブスプロケット100回転した時に後輪タイヤがGSX250Rが30.4回転とZX-25Rが35回転と5回転が少ない分力強く地面を蹴ってくれるというわけです。
まとめ
減速比とは絶対評価ではなく相対評価のような数値です。排気量が変われば減速比も変化し、タイヤのサイズも違えばまた減速比も変わります。
結局は一番乗りやすい減速比と言うのは存在しません、ただメーカーが何を重視したか、このバイクになにをさせようとしてるのかそれを見分けるポイントだとおもってくれるくらいが一番だと思います。
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